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読書メモ・ノンフィクション(鉄道・交通)(No.1 - No.5)

N0.1 岡 並木「都市と交通」 [NEXT]

 日本の都市内交通の現状が、歩行者、バス・鉄道利用者、自転車利用者それぞれの立場でどの様な問題を抱えているかを、東南アジア諸国や欧米との比較を交えて的確に明らかにしている。我が国の交通のバリアフリー化の立ち遅れを指摘している部分は、交通弱者の立場に立って取り組んできた欧州諸国と、役所の机の上だけで公共事業を計画する日本の差を鋭くついている様に思われた。
 刊行から20年余を経ているが、バブル期を経て現状は当時の問題の多くが未解決なばかりか、むしろ悪化している面が少なからず見られることにショックを受けた。

 体裁:新書版 / 出版元:岩波書店(岩波新書)
 刊行:1981.5 / 読んだ時期:2003.11
2004年01月09日

N0.2 宮脇 俊三「線路のない時刻表」 [PREV] | [NEXT]

 かなり前に読んだ本だが、著者の宮脇氏が昨年他界されたとの報を知り、改めて本棚から取り出してみた。国鉄末期に建設凍結が決定された路線などの工事現場を実際に訪問し、工事担当者や地元の自治体関係者から直接取材した報告。それぞれの路線に、宮脇氏が独自に作成した開業時の「架空時刻表」が付けられている。
 現在は本書で取り上げた路線の全てが開業している。瀬戸大橋、津軽海峡の両線以外は第三セクター方式での開業となった。民営化直前のダイヤ編成方針の転換などもあって、全てが氏の架空時刻表通りの運転形態になっている訳ではないが、開業時のダイヤと氏の予想ダイヤを見較べると、その取材の綿密さと読みの鋭さに改めて感心させられる。
 現在、国鉄の地方交通線を引き継いだ第三セクターの多くが経営難に苦しむ中、これら新路線の多くが好調な経営を続けているという。「北越北線(ほくほく線)」など、氏の予想を上回る本数の特急と普通列車が設定され、在来線では日本最高の160km/h運転も実現した。本書で取り上げた路線の中には工事凍結がなく、順調に予算がついていれば数年早く開業できた路線も少なくないというのは残念な話だ。

 体裁:文庫版 / 出版元:新潮社(新潮文庫)
 刊行:1989.4 (単行:1986.4) / 読んだ時期:1990ころ
 備考:宮脇氏は2003年2月26日逝去された
2004年01月09日

N0.3 宮脇 俊三「時刻表2万キロ」 [PREV] | [NEXT]

 これも宮脇氏の著書で、かなり前に読んだもの。宮脇氏は大学卒業後中央公論社に勤務し、雑誌「中央公論」編集長、編集局長など編集畑の仕事を続け、1978年同社常務取締役を最後に退職されたという経歴の持ち主。在職中から「愛読書は時刻表」というほどの鉄道ファンで、退職後は作家として主として鉄道に関連するエッセイ、紀行、小説などを執筆している。氏の著作は鉄道ファンでなくても、鉄道が好きな人にはたまらない内容で、しかも文体は読みやすくユーモアがあり非常に評判が良かった。
 本書は1975年に当時の国鉄全線完乗を決意し、約2年半でそれを達成するまでの経過を順を追って書いている。完乗を決意した時点で国鉄の営業キロ2万キロのうち90%を乗り終えていたが、未乗の10%は末端線が多いため、完乗を達成するにはほぼ70%を乗り直す必要があったという。
 この本を読んで国鉄(あるいは後のJR)全線、さらには私鉄や地下鉄も含む全鉄道線完乗を目指し達成した鉄道ファンも多いと聞く。残念ながら国鉄→JRの移行期を中心に、宮脇氏の完乗達成後廃止された路線も多くあり、その様な路線の乗車記はさらに哀愁をそそる。

 体裁:文庫版 / 出版元:河出書房新社(河出文庫)
 刊行:1980.5 / 読んだ時期:1985ころ
2004年01月14日
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natter_f@hotmail.com